「うちは関係ないと思ってました」
確定申告の話になると、こう感じる人は少なくありません。
会社員だから。
年末調整を受けているから。
副業といっても少額だから。
家計に大きな影響が出ているわけではないから。
どれも、感覚としては自然です。
ただ、確定申告が必要かどうかは、「自分が大ごとだと思っているか」では決まりません。
収入の種類、所得の金額、年末調整の有無、控除を受けるかどうか。
そうした条件を組み合わせて判断します。
この記事では、確定申告が必要になる主なケースと、見落としやすい判断ポイントを整理します。
なお、この記事は2026年7月30日時点で確認できる国税庁の令和7年分情報をもとにしています。
個別の判断は、国税庁の案内、税務署、税理士などで確認してください。
確定申告が必要かどうかは「収入」だけで決まらない
確定申告でまず混乱しやすいのは、「収入」と「所得」の違いです。
収入は、入ってきたお金です。
所得は、収入から必要経費などを差し引いた後の金額です。
たとえば副業で年間30万円の売上があっても、必要経費が12万円あれば、所得は18万円です。
逆に、月2万円程度の副業でも、年間で見れば24万円になります。
経費がほとんどなければ、所得が20万円を超える可能性があります。
副業は「売上」ではなく「所得」で見る
ケースA:売上は30万円でも、経費がある場合
売上30万円 − 経費12万円 = 所得18万円
所得は20万円以下。所得税の確定申告が不要になるケースがあります。
ケースB:月2万円でも、経費がほとんどない場合
月2万円 × 12か月 = 売上24万円
売上24万円 − 経費ほぼ0円 = 所得24万円
所得が20万円を超えるため、確定申告が必要になる可能性があります。
ポイント:判断するのは「入ってきたお金」ではなく、必要経費を引いたあとの「所得」です。
つまり、「月に少しだけだから大丈夫」とは言い切れません。
確定申告が必要かどうかは、金額の印象ではなく、所得としてどう扱われるかで判断する必要があります。
会社員でも確定申告が必要になる主なケース
会社員の多くは、勤務先の年末調整で所得税の精算が終わります。
そのため、毎年必ず確定申告が必要というわけではありません。
ただし、会社員でも確定申告が必要になるケースがあります。
代表的なのは、給与収入が年間2,000万円を超える場合です。
また、1か所から給与を受けていて、その給与が源泉徴収の対象になっている人でも、給与所得と退職所得以外の所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になることがあります。
ここでいう20万円は、売上や入金額ではなく「所得」です。
副業、原稿料、講師料、アフィリエイト、ハンドメイド販売、フリマ販売、投資関連の所得などがある場合は、まず年間の所得を整理してみる必要があります。
副業収入で見落としやすい20万円の考え方
副業でよくある誤解が、「20万円以下なら何もしなくていい」というものです。
会社員で、給与以外の所得が20万円以下なら、所得税の確定申告が不要になるケースはあります。
ただし、ここには注意点があります。
まず、20万円は収入ではなく所得です。
次に、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。
さらに、医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする場合は、副業分も含めて申告が必要になります。
つまり、「20万円以下だから絶対に何もしなくていい」ではありません。
見るべきなのは、次の3つです。
給与以外の所得があるか。
その所得が年間でいくらか。
自分は他の理由で確定申告をする予定があるか。
この3つを確認すると、判断がかなり整理しやすくなります。
複数の給与がある場合も注意する
アルバイトを掛け持ちしている人、転職のタイミングで複数の勤務先から給与を受け取った人、副業先から給与として支払われている人も注意が必要です。
給与を2か所以上から受けている場合、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると、確定申告が必要になることがあります。
ここで大切なのは、「副業だから雑所得」と決めつけないことです。
副業の支払い方が給与なのか、報酬なのか、事業収入なのか、雑所得なのかによって、扱いは変わります。
- 源泉徴収票があるのか。
- 支払調書があるのか。
- 請求書で受け取っているのか。
まずは、自分が受け取っているお金の種類を確認するところから始めるのが安全です。
年金を受け取っている人の確定申告
年金を受け取っている人にも、確定申告が必要な場合と不要な場合があります。
公的年金等の収入金額が400万円以下で、公的年金等以外の所得が20万円以下など、一定の条件に当てはまる場合は、所得税の確定申告が不要になる制度があります。
ただし、これも「何も確認しなくていい」という意味ではありません。
年金以外の所得がある場合、住民税の申告が必要になることがあります。
また、医療費控除や生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除などで還付を受けたい場合は、確定申告をする意味があります。
年金の人ほど、所得税の確定申告が必要かどうかと、還付を受けるために申告するかどうかを分けて考えることが大切です。
退職金・投資・不動産がある場合
退職金は、多くの場合、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、源泉徴収で課税関係が完了します。
ただし、源泉徴収されていない退職金がある場合や、外国企業から受け取った退職金などがある場合は、確定申告が必要になることがあります。
投資や不動産についても注意が必要です。
株式の譲渡、配当、不動産の売却、賃貸収入などは、口座の種類や所得の内容によって扱いが変わります。
「投資だから」「不動産だから」と一括りにせず、自分の所得の種類と申告の目的を確認しましょう。
確定申告が「必要」ではないが、した方がよいケース
確定申告には、義務として必要な申告と、還付を受けるために行う申告があります。
たとえば会社員でも、次のような場合は確定申告によって税金が戻ることがあります。
医療費控除を受けたい。
ふるさと納税の寄附金控除を受けたい。
住宅ローン控除の初年度にあたる。
年の途中で退職して、その後に再就職していない。
災害や盗難などで雑損控除を受けたい。
年末調整で反映できなかった控除がある。
これらは、「確定申告をしなければならない」という話とは少し違います。
ただ、申告しなければ還付を受けられない可能性があります。
必要かどうかだけでなく、「した方が得なのか」「申告しないと受けられない控除があるのか」も確認しておきたいところです。
ふるさと納税で見落としやすい注意点
ふるさと納税をしている人は、ワンストップ特例に注意が必要です。
ワンストップ特例を申請していても、医療費控除や副業所得などの理由で確定申告をする場合、ワンストップ特例は使えなくなります。
その場合は、ワンストップ特例を申請した寄附分も含めて、確定申告で寄附金控除として申告する必要があります。
ここはかなり見落としやすいポイントです。
「ワンストップを出したから大丈夫」と思っていても、あとから確定申告をすることになった場合は、ふるさと納税も一緒に整理し直しましょう。
迷ったときの確認手順
確定申告が必要かどうか迷ったら、いきなり答えを出そうとしなくて大丈夫です。
まず、1年間に受け取ったお金を並べます。
給与、副業、年金、退職金、投資、不動産、原稿料、講師料、フリマや販売収入などです。
次に、それぞれがどの種類の所得に当たるかを確認します。
そして、収入ではなく所得を見ます。
副業であれば、売上から必要経費を差し引いた後の金額です。
そのうえで、年末調整を受けているか、給与以外の所得が20万円を超えるか、複数の給与があるか、還付を受けたい控除があるかを確認します。
最後に、国税庁の確定申告特集や確定申告書等作成コーナー、税務署、税理士などで個別の判断を確認します。
大切なのは、不安のまま放置しないことです。
数字を並べるだけでも、かなり見え方は変わります。
次に読む記事
ふるさと納税の落とし穴を確認したい場合はこちらの記事へ進んでください。
副業や収入減への向き合い方を、家計の判断として整理したい場合はこちらです。
「収入減ショック」に負けない!30代子育て夫婦のための副業・投資マインドセット
働き方と社会保険の壁を考えたい場合はこちらにつながります。
確定申告は、不安ではなく判断の整理
確定申告が必要になるケースは、特別な人だけの話ではありません。
会社員でも、副業があれば関係します。
年金を受け取っている人でも、他の所得や控除によって判断が変わります。
ふるさと納税や医療費控除のように、申告した方がよいケースもあります。
大事なのは、「うちは関係ない」と決めつけないことです。
一方で、必要以上に怖がる必要もありません。
収入を確認する。
所得を整理する。
控除を確認する。
住民税やふるさと納税の影響も見る。
それでも迷う場合は、公的窓口や専門家に確認する。
この順番で見ていけば、確定申告は漠然とした不安ではなく、判断できるテーマになります。
お金の不安は、見えないままだと大きくなります。
でも、条件を分けて、数字を置いて、確認先を決めれば、少しずつ扱える形になります。
確定申告は、過去のお金を整理する手続きであると同時に、自分の働き方や家計の状態を見直すきっかけにもなります。