Bリーグの改革に象徴されるように、プロスポーツの世界では、心の温度差を生みかねない「成績だけ」の評価から、事業経営という「非言語サイン」へ視点が移り始めています。
もしプロ野球が東証市場のように「プライム/スタンダード/グロース」の業績基準で再編されたらどうなるか?事業会社の経営層で培った構造的な視点から、この「もしも」の価値を読み解きます。
経営の視点:なぜ「成績50%・経営50%」の評価が必要なのか
企業の論理と「地域に根ざす力」を評価する視点
従来のプロ野球では、勝敗という結果がすべてであり、チームの継続性や地域への貢献度が評価軸に入ることはありませんでした。
しかし、スポーツチームは、地域経済に深く結びついた「総合産業」としての側面を強く持ちます。
この構造的な視点から、勝敗に一喜一憂する感情論だけでなく、ファン・地域・経営の三者を安定させる経営力が、チームの持続可能性(サステナビリティ)を測る上で重要になります。
「人口比補正」が示す、地方球団の真の経営力
観客動員は、売上と並ぶ主要な経営指標です。東京のような大都市圏での動員は、人口の多さという有利な条件に支えられています。
そこで、この構想では人口比補正ロジックを採用し、観客動員の評価に公平性を持たせています。
これは、地方都市で少ないパイの中から確実にファンを動員する「地元に根差す力」を、東京の動員と同等以上の価値を持つものとして評価する構造的な取り組みです。
スポーツ経営の事実:仮想ランクから見る各チームの財務構造
プライムとスタンダードを分ける「動員と売上」の壁
仮想のランク付けでは、年間売上30億円以上かつ補正動員15,000人以上が「プライム」の基準とされています。
ここで注目すべきは、成績上位でも経営指標が満たない「東神クラブ」(スタンダード)の存在です。
これは、事業会社の経営層で培った構造的な視点で見ると、財務基盤やマーケティング戦略の強化が、いくら成績が良くても市場(ディビジョン)残留の鍵となるという事実を示しています。
グロース市場:成長期待枠が持つ「地域貢献」の価値
「高知ブルーズ」や「宮崎サンパワーズ」といったグロース市場のチームは、売上や実動員は低いものの、地域スクールや地産品連携などの地域貢献で高い評価を得ています。
これは、目先の売上は小さくても、将来的なファン層の拡大や行政・地元企業との信頼関係構築に投資している段階と見なされます。
この「成長期待枠」が、将来のプライム昇格への足がかりとなるのです。
新しい時代のスポーツファンが持つべき「視点」の整え方
観戦行動を「チームへの投資」と捉えるマインドセット
経営基準でチームが評価される世界では、ファンがチームに対して持つべき視点も変わります。
観戦やグッズ購入、クラウドファンディングへの参加は、単なる趣味ではなく、「チームの業績に関与する投資行動」となります。
ファン自身が来場や物販を通じて支援活動を行い、チームの経営成績を支えるという意識は、従来の応援とは異なる、より深く能動的なエンゲージメントを可能にします。
GM・CFO的な視点でチームを応援する「余白」の発見
この変革は、ファンにGMやCFOのような構造的な視点を求めることになります。
チーム編成や選手の契約だけでなく、「事業モデル」「広報戦略」「地域連携」が評価の対象となるため、ファンは試合結果以外にも着目し、チームの経営状況を評価する「余白」を持つようになります。
勝ち負けという短期的な結果から解放され、「地域と経営」という長期的な視点でチームの未来を考えることができるのです。
チーム経営の静かな光
プロ野球が経営で戦う時代とは、勝ち負けという不安定な要素だけでなく、人を巻き込む力、地域を活性化する力といった、確かな事業構造が評価される時代です。
この変革は、すべての人にとって、野球という文化を未来に繋ぐための「安心」につながる取り組みです。
私たち一人ひとりの視点の変化が、チーム経営の静かな光となり、野球の景色を彩る余白となることを願っています。