取締役会に付議する議案を整理する際、多くの企業で次のような判断が行われています。
- 金額が小さいから「報告」でよい
- 前例があるから「報告」で問題ない
- 執行側が決めているので「報告」で足りる
しかし、この整理は必ずしも安全ではありません。
取締役会における「決議事項」と「報告事項」の区分は、感覚や慣習ではなく、構造で判断すべきテーマです。
なぜ「報告でいいか」が問題になるのか
IPO準備やガバナンス強化の局面では、判断の中身以上に、次の点が問われます。
- 誰が最終判断者なのか
- どの会議体で意思決定されたのか
- 規程と実際の運用が一致しているか
つまり、「その判断を、なぜ取締役会決議にしなかったのか」を説明できるかどうかが本質です。
判断の前提となる3つの規程
取締役会の決裁区分は、
単独のルールで決まるものではありません。
1. 定款
- 取締役会設置会社かどうか
- 取締役会にどこまでの権限を持たせているか
2. 取締役会規程
- 取締役会決議事項の範囲
- 報告事項として整理される事項
3. 職務権限規程(職務権限一覧)
- 誰が、どこまで判断できるか
- 取締役会に上げるべきラインの設定
この3点の整合性が取れていなければ、「報告でよいかどうか」は判断できません。
金額基準だけで判断してはいけない理由
実務でよくある誤解が、「金額が小さい=報告でよい」という整理です。
次のようなケースでは、金額に関わらず慎重な判断が求められます。
- 外部リスクや契約条件が重い案件
- 新規性の高いスキームや前例のない取引
- 株式・資本政策に影響を及ぼす判断
重要なのは金額ではなく、会社としての意思表明に該当するかどうかです。
「実質判断」になっていないかを見極める
執行側からは「報告事項」として上がってくる案件でも、次の要素が含まれている場合、実質的には取締役会決議が必要なケースがあります。
- 判断の是非によって将来の経営方針が左右される
- 取締役の善管注意義務が問われ得る
- 後から第三者に説明責任が生じる
このグレーゾーンを整理する役割こそ、CFOに求められます。
IPO準備で必ず確認される視点
IPO審査や監査法人レビューでは、以下の点が重点的にチェックされます。
- 取締役会招集通知と議事録の整合性
- 決議事項/報告事項の分類の妥当性
- 規程と実際の意思決定プロセスの一致
書類が整っているだけでは足りません。
「なぜこの扱いにしたのか」を説明できるかが問われます。
CFOに求められる判断スタンス
CFOは、「これはどちらですか?」と確認する立場ではなく、
- 規程を前提に判断軸を整理し
- 経営陣に判断理由を説明し
- 必要であれば規程の見直しを主導する
意思決定の構造を設計する立場です。
規程はルールブックではありません。
判断を通すための設計図です。
「報告でいいか」を考える前に、CFOが整理すべきこと
取締役会の決裁区分を考える際、CFOが確認すべきポイントは明確です。
- 規程上、誰が最終判断者か
- その判断は会社の意思として外に出るか
- 後から説明できるプロセスか
「報告で済ませるかどうか」は結論であって、判断基準ではありません。
意思決定の信頼性は、この整理から始まります。