【経営と数字のリアルシリーズ 第2章-1】法人税とは?──会社の利益にかかる税金

経営と数字のリアル

経営者やCFOを目指す皆様、会社の財務を握る第一歩として、法人税の理解は必須です。この税金は、会社の利益にかかる国税であり、資金繰りや経営戦略に直結します。専門用語を最小限に、初心者でも実務で使える視点で解説します。さらに、会計と税務の違いを明確にする「税効果会計」や、予定納税の会計処理にも触れます。さあ、会社の「稼ぐ力」を守る知識を一緒に身につけましょう!

1. 法人税の基本概念

法人税とは、法人(会社)が稼いだ利益に対して課される国税です。個人事業主が納める所得税の「法人版」とイメージすると分かりやすいでしょう。課税対象は、売上から経費や損失を差し引いた「所得」、つまり純粋な利益です。

この税金の目的は、国の財源確保と経済活動の調整。日本の法人税は、利益額に応じた累進課税ではなく、一定の税率が適用されるシンプルな仕組みです。経営者やCFOとしては、この基本を押さえて、税務戦略の土台を築きましょう。

2. 法人税の計算の流れ

法人税の計算は、以下のステップで進めます。具体例を交えて、初心者でも理解できるように解説します。

(1)課税所得の計算

収益(売上など)から費用(人件費、広告費、減価償却費など)を引いて利益を計算します。ただし、会計上の利益と税務上の所得には違いがあります。例えば、交際費の一部は税務上「経費として認めない(非損金不算入)」とされ、調整が必要です。


売上1億円、経費8,000万円、交際費200万円(うち100万円が非損金不算入)の場合
会計上の利益:1億円 - 8,000万円 = 2,000万円
税務上の所得:2,000万円 + 100万円(非損金不算入)= 2,100万円

(2)税率の適用

日本では、企業の規模に応じて税率が異なります。

  • 中小企業(資本金1億円以下):基本税率23.2%、所得800万円以下の部分は軽減税率15%
  • 大企業:基本税率23.4%

中小企業経営者なら、軽減税率を活用することで税負担を抑えられます。CFOとしては、この差を理解し、資金計画に反映させましょう。

例(続き)
所得2,100万円の中小企業の場合、800万円までは15%、残りは23.2%で計算。
税額 =(800万円 × 15%)+(1,300万円 × 23.2%)= 120万円 + 301.6万円 = 421.6万円

(3)申告と納税

事業年度終了後、2か月以内に税務署に申告書を提出し、納税します。期限を過ぎると加算税や延滞税が発生するため、計画的な対応が不可欠です。

(4)会計と税務の差:税効果会計の基本

会計上の利益と税務上の所得の違いは、税務調整だけでなく、財務諸表にも影響します。ここで登場するのが「税効果会計」。これは、税務上の一時的な差異(例:減価償却の方法の違いや引当金の計上タイミング)による税金の影響を、適切に財務諸表に反映する手法です。

例えば、会計上は費用として計上した引当金が、税務上はまだ経費として認められていない場合、将来の税負担が減る「繰延税金資産」を計上します。これにより、財務諸表が実態に即したものになり、投資家や銀行への説明がしやすくなります。CFOを目指すなら、税効果会計の基本を押さえ、財務の透明性を高めることが重要です。

3. 法人税の重要ポイント

法人税を効果的に管理するには、以下のポイントを押さえてください。実務で差がつく知識です。

(1)欠損金の繰越控除

赤字(欠損金)が出た場合、その額を最大9年間繰り越して、将来の利益と相殺できます。例えば、今年500万円の赤字、来年1,000万円の黒字なら、来年の課税所得は500万円(1,000万円-500万円)に減らせます。資金繰りを守る強力な仕組みです。

(2)税務調査への対応

税務署は、過度な経費計上や不適切な申告をチェックします。特に交際費や役員報酬は注目の的です。透明性のある申告を心がけ、信頼を築きましょう。

(3)優遇措置

中小企業向けの軽減税率や、研究開発費の税額控除など、税負担を軽減する制度があります。これらを活用することで、資金を成長投資に回せます。

4. 経営者・CFO視点での法人税の意義

法人税は、経営戦略の要です。以下の視点で、税務を経営に活かしましょう。

  • 資金繰りへの影響:税金の支払いはキャッシュフローに大きな影響を与えます。納税額を事前に予測し、資金計画を立てましょう。
  • 節税戦略:減価償却の最適化や特例の活用など、合法的な節税で税負担を軽減。
  • 経営判断との連動:利益管理と税務戦略を連動させ、投資や配当の最適なタイミングを見極めましょう。

CFOを目指すなら、税務を単なる義務ではなく、企業価値向上のツールとして捉えてください。

5. 実務でよくある質問と注意点

よくある質問

  • 個人事業主との違いは?
    個人事業主は所得税、会社は法人税。法人税は一律税率で、税務調整が複雑です。
  • 予定納税(仮払い法人税)とは?
    前年度の税額に基づき、年度途中に税金を前払いする制度で、会計処理上は「仮払法人税」として処理します。この前払い分は当期の損益計算書(PL)に影響しないよう、資産として計上するテクニックです。例えば、300万円を予定納税した場合、貸借対照表(BS)の「仮払法人税」に計上し、翌期の納税時に精算。これにより、当期の利益を正確に反映できます。
  • 税効果会計のメリットは?
    税務と会計の差を調整し、財務諸表の信頼性を高めます。特に上場企業や資金調達時に重要です。

注意点

申告期限を過ぎると、加算税(最大15%)や延滞税(年14.6%など)が課されます。予定納税の資金繰りも含め、期限厳守を徹底しましょう。
事例:ある中小企業が軽減税率と特例を活用し、年間100万円の税負担を削減。節約した資金で新規事業に投資し、売上を20%伸ばした例があります。

6. まとめと次章へのつなぎ

法人税は、会社の利益を管理し、成長を支える基盤です。税率や特例、税効果会計、予定納税の処理を理解し、節税と投資のバランスを取ることで、企業価値を高められます。経営者やCFOを目指す皆様、この知識を武器に、自信を持って次のステップへ進みましょう!

次章では、「法人事業税(外形標準課税)」を解説します。利益がなくても課されるこの税金、どのような仕組みなのか?次回もお楽しみに!

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