キャッシュフロー計算書とは?
キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement:以下CF)は、企業のお金の“流れ”を映し出すツールです。
損益計算書(PL)が利益の“発生”(例:売上計上)を、貸借対照表(BS)がお金の“蓄積”(例:資産や負債の残高)を表しているのに対し、キャッシュフロー計算書(CF)は『いつ、どこで、どれだけお金が動いたか』(例:入金や支払いのタイミング)を現金ベースでリアルに示します。
3つの区分で見る
キャッシュフロー計算書は以下の3つの区分で構成されています:
- 営業活動によるキャッシュフロー(本業で稼いだお金)
日常の本業活動による現金の流れを示します。 - 例:商品の売上による入金(+)、仕入れの支払い(-)、従業員の給与支払い(-)、税金の支払い(-)。
- 投資活動によるキャッシュフロー(未来のための支出)
資産の増減に関わるお金の流れで、将来の成長に向けた投資を示します。 - 例:設備投資(例:新工場建設のための支出、-)、有価証券の購入(-)、資産売却による収入(+)。
- 財務活動によるキャッシュフロー(資金調達や返済)
資金の調達や返済に関するお金の流れを示します。 - 例:銀行からの借入による入金(+)、借入金の返済(-)、株式発行による資金調達(+)、配当金の支払い(-)。
PLとの違いに注意!
PLで黒字でも、CFではお金が不足する場合があります。たとえば:
在庫を仕入れて現金が出ていく:売れていない在庫を500万円分仕入れた場合、PLでは費用計上されないものの、現金は500万円減少します。
売上が立っても入金が先:売上1,000万円を計上したが、支払いサイトが60日でまだ入金がない場合、PLでは利益が出ていても現金は増えません。
キャッシュが減ると、給与や仕入れ代金の支払いができなくなり、倒産リスクに直結します。
だからこそ、PL(会計上の利益)とCF(実際の現金)をセットで確認しないと、資金繰りを見誤り、現実の経営判断に支障をきたすことがあります。
実務で見ておきたいポイント
営業活動によるキャッシュフローがプラスか?
- 本業で稼げているかを確認
営業活動によるキャッシュフローがプラスであれば、本業で現金を稼げている状態です。たとえば、売上による入金が1,000万円、仕入れや給与の支払いが800万円の場合、営業活動によるキャッシュフローは+200万円です。 - マイナスの場合は要注意
マイナスの場合、本業で現金を稼げておらず、いずれ資金繰りに詰まるリスクがあります。たとえば、入金が遅れて売掛金が増加し、営業活動によるキャッシュフローが-300万円の場合、借入などで補填する必要が出てきます。
投資活動によるキャッシュフローがマイナスでもいい?
- 成長中の企業なら問題なし
成長中の企業は設備投資や事業拡大のため、投資活動によるキャッシュフローがマイナスになることが多いです。たとえば、新工場建設に500万円を投資した場合、投資活動によるキャッシュフローは-500万円となります。 - 継続的なマイナスは要注意
毎年大きなマイナスが続く場合、投資が回収できていない可能性があります。たとえば、5年間で合計2,000万円の投資を行ったが、売上増加につながらない場合、投資戦略を見直す必要があります。
財務活動によるキャッシュフローがプラスかマイナスか?
- プラスなら資金調達
財務活動によるキャッシュフローがプラスの場合、資金調達を行っている状態です。たとえば、銀行から1,000万円を借り入れた場合、財務活動によるキャッシュフローは+1,000万円です。成長のための資金調達なら問題ありません。 - マイナスなら返済や配当
マイナスの場合、借入金の返済や配当金の支払いが多いことを示します。たとえば、借入金を500万円返済し、配当金を200万円支払った場合、財務活動によるキャッシュフローは-700万円です。過剰な返済や配当は資金繰りを圧迫する可能性があるので、戦略的なバランスが重要です。
まとめ
キャッシュフロー計算書は、会社のお金の流れを示す重要なツールです。
PLやBSでは見えない現実の資金状況、たとえば売上が増えても入金が遅れて資金不足になるリスクなどを把握するために欠かせません。
CFが示すのは、会計上の“利益”ではなく、会社が“生き延びる力”を持っているかどうか、つまり資金繰りの実態です。
これまで、BSで会社の“体力”、PLで“稼ぐ力”を学び、今回CFで“お金の流れ”を理解しました。財務諸表を総合的に読み解く力は、経営や家計管理に欠かせません。