「また同じ失敗をした」 「なんでいつもこうなるんだろう」 「分かっているのに、変えられない」
判断の仕方を学んでも、思考のクセは変わらない。正しい方法を知っていても、なぜか同じパターンを繰り返してしまう。
問題は、判断ではありません。判断の前にある、思考そのものです。
思考は、感覚ではありません。思考は、構造です。そして構造は、観測できます。変更できます。再設計できます。
ここでは、判断OSのさらに上位にある「思考の構造」について語ります。
思考は、あなたが持っているものではない
多くの人は、「思考」を自分の内側にあるものだと考えています。
「私はこう考える人間だ」 「自分の考え方のクセがある」 「この性格は変えられない」
でも、これは誤解です。
思考は、あなたが「持っている」ものではありません。思考は、あなたが「動かしている」構造です。
たとえば、家計の話をしようとして、相手が黙り込む。このとき、あなたの中でこんな思考が動きます。
「また逃げられた」 「真剣に考えてくれない」 「自分だけが不安を抱えている」
この思考は、どこから来たのでしょうか?
答えは、「過去の経験から作られた構造」です。過去に似た場面で感じた感情、その時に選んだ解釈、繰り返されたパターン。これらが積み重なって、思考の構造が作られています。
思考は、あなたではありません。思考は、あなたの中で動いている「プログラム」です。
思考の構造には、3つの層がある
思考を構造として扱うとき、3つの層に分解できます。
第1層:入力(何を見ているのか)
思考の最初の層は、「入力」です。あなたが何を見て、何を聞いて、何を感じているのか。
たとえば、相手が黙り込んだとき、あなたは何を見ていますか?
- 相手の表情
- 相手の姿勢
- 相手の沈黙の長さ
- 自分の心拍数
- 部屋の空気
このうち、どれを「入力」として認識しているかで、思考の出力は変わります。
「相手が腕を組んでいる」という入力を「拒絶」と解釈する人もいれば、「考えている」と解釈する人もいます。「沈黙」を「無視」と解釈する人もいれば、「言葉を選んでいる」と解釈する人もいます。
入力は、客観的な事実ではありません。入力は、あなたが「選択している」ものです。
入力層を扱う領域:
- 家計×心理の「眺める位置」では、家計における入力の選択を観測します
- 投資×心理の「眺める位置」では、投資における情報の入力を扱います
- CFO×心理の「不確実性を観測する」では、組織における入力の可視化を支援します
第2層:処理(どう解釈しているのか)
思考の第2層は、「処理」です。入力された情報を、どう解釈し、どう変換しているのか。
相手が黙り込んだとき、あなたの脳は瞬時に処理を実行します。
「黙り込む」→「逃げている」
「黙り込む」→「考えている」
「黙り込む」→「怒っている」
この処理は、ほとんど無意識です。気づいたときには、すでに解釈が完了しています。
処理の構造は、過去の経験から作られています。過去に「黙り込まれた」経験が、「逃げられた」という痛みと結びついていれば、同じ処理が繰り返されます。
処理を変えるには、まず処理を「見る」必要があります。
たとえば、こんなふうに観測します。
「相手が黙り込んだ → 私は『逃げている』と解釈した → なぜこの解釈を選んだのか?」
この問いが、処理の構造を可視化します。
処理層を扱う領域:
- 家計×心理の「線を引く位置」では、家計における解釈の境界線を設計します
- 投資×心理の「線を引く位置」では、投資における解釈の規律を明示します
- CFO×心理の「判断に規律を宿す」では、組織における解釈の構造化を支援します
第3層:出力(どう行動しているのか)
思考の第3層は、「出力」です。解釈の結果、どう行動するのか。
相手が黙り込んで、あなたが「逃げている」と解釈したとき、あなたはどう行動しますか?
- さらに問い詰める
- 自分も黙り込む
- 場を離れる
- ため息をつく
この行動が、次の入力を生み出します。あなたが問い詰めれば、相手はさらに黙り込む。相手が黙り込めば、あなたはさらに「逃げている」と解釈する。
これが、思考のループです。
出力を変えるには、処理を変える必要があります。処理を変えるには、入力を変える必要があります。
思考は、3つの層が連動して動いています。
出力層を扱う領域:
- 家計×心理の「任される位置」では、家計における行動の構造化と委任を扱います
- 投資×心理の「任される位置」では、投資における行動プロセスの再現性を構築します
- CFO×心理の「知性を構造に託す」では、組織における行動の委任可能性を支援します
思考の構造は、どう変えるのか
思考の構造を変えるには、3つのステップがあります。
ステップ1:思考を外に出す
思考を「自分の中にあるもの」として扱っている限り、思考は変わりません。思考を外に出す必要があります。
たとえば、紙に書く。声に出す。誰かに話す。
「相手が黙り込んだ → 私は『逃げている』と思った」
この一文を書くだけで、思考は「観測対象」になります。観測できるものは、変更できます。
ステップ2:処理の構造を分解する
次に、処理の構造を分解します。
「なぜ私は『逃げている』と解釈したのか?」
この問いに答えるとき、過去の経験が浮かび上がります。過去に似た場面で、似た痛みを感じた記憶。その記憶が、今の処理を作っています。
処理の構造が見えたら、別の処理を設計できます。
「相手が黙り込んだ → もしかしたら、言葉を選んでいるのかもしれない」
この「もしかしたら」が、新しい処理です。
ステップ3:新しい処理を実行する
新しい処理を設計したら、次は実行です。
相手が黙り込んだとき、意識的に「言葉を選んでいるのかもしれない」と解釈してみる。そして、行動を変えてみる。
問い詰めるのではなく、「今、何を考えてる?」と聞いてみる。
この実行が、新しい入力を生み出します。相手の反応が変わる。あなたの解釈が変わる。行動が変わる。
思考の構造が、書き換わります。
思考の構造と、判断の構造は、どう違うのか
ここまで読んで、こう思った人もいるかもしれません。
「これって、判断OSと何が違うの?」
違いは、「階層」です。
判断OSは、「何を選ぶか」を扱います。AとBのどちらを選ぶか。今やるか、後でやるか。線をどこに引くか。
思考の構造は、「なぜそう考えるのか」を扱います。なぜAを選びたくなるのか。なぜ今やりたくないのか。なぜその線を引きたいのか。
判断OSは、思考の構造の上で動きます。
たとえば、家計の話をするタイミングを決めるとき、判断OSはこう動きます。
「眺める → 線を引く → 任される」
でも、その前に、思考の構造がこう動いています。
「相手の表情を見る(入力) → 『今は無理そう』と解釈する(処理) → 話を持ち出さない(出力)」
判断OSは、思考の構造が生み出した「解釈」を前提に動きます。だから、思考の構造が変わらなければ、判断も変わりません。
思考の構造は、判断の前に立つ、もうひとつのOSです。
思考は、書き換わり続ける
思考の構造は、固定されたものではありません。思考は、書き換わり続けます。
新しい経験が、新しい処理を作ります。新しい処理が、新しい行動を作ります。新しい行動が、新しい入力を作ります。
思考は、動的な構造です。
だから、「自分はこういう性格だから」という言い方は、正確ではありません。正確には、「自分は今、こういう思考の構造を動かしている」です。
構造は、変更できます。
ただし、思考の構造を変えるには、時間がかかります。一度や二度、新しい処理を実行しただけでは、構造は変わりません。何度も繰り返す必要があります。
思考の構造は、筋肉のようなものです。使えば使うほど、強化されます。使わなければ、弱まります。
思考は、構造です。構造は、設計できます。
あなたの思考を、どこから観測するか
思考の構造を観測するには、3つの入口があります。
家計における思考を観測したい方:
household.takebyc.jpで、家計心理の3つの位置から始めてください。家族との対話における思考の構造を扱います。
投資における思考を観測したい方:
invest.takebyc.jpで、投資心理の3つの位置から始めてください。不確実性に対する思考の構造を扱います。
組織における思考を観測したい方:
cfo.takebyc.jpで、CFOの余白の3つの位置から始めてください。資源配分における思考の構造を扱います。
どの領域も、「入力 → 処理 → 出力」という同じ構造で動いています。
思考は、あなたが持っているものではありません。思考は、あなたが動かしている構造です。