「今年こそちゃんとやろう」と決めた家計管理。でも、考えれば考えるほど、何から手をつけていいか分からなくなる。収支を把握すべきなのか、予算を立てるべきなのか、家族に相談すべきなのか。全部やろうとして、結局何もできない。
この苦しさは、あなたの思考力が足りないからではありません。思考の構造が見えていないから、考えること自体が迷路になっているのです。
家計管理における思考には、実は3つの層があります。そしてこの3つを、順番に、分けて考えることができれば、「考えること」は重荷ではなく、明確な道筋に変わります。
思考が混乱する理由
家計管理で行き詰まる人の多くは、こんな思考のループにはまっています。
「まず現状を把握しないと」と思って家計簿を開く。でも数字を見ながら「これで本当にいいのか?」と不安になる。そして「配偶者に何て説明しよう」と考え始める。気づけば、把握も判断も説明も、ごちゃまぜになって、頭の中がぐちゃぐちゃ。
これは、3つの異なる思考の層を、同時に処理しようとしているからです。観察する思考、判断する思考、説明する思考。この3つは、まったく異なる脳の使い方を要求します。なのに、ひとつの「考える」という言葉で括られているから、混乱するのです。
思考の構造が見えないまま考えようとすることは、地図を持たずに迷路を歩くようなものです。道はあるのに、どの道を進めばいいか分からない。だから、疲れるのです。
観察する思考——今を見る
家計管理における最初の思考の層は、「観察」です。ここでは、判断も評価もせず、ただ「今、何が起きているのか」を見ます。
たとえば、先月の支出が30万円だった。貯金が3ヶ月間まったく増えていない。クレジットカードの支払いが給料日の翌週に来る。これらは、すべて「事実」です。良いとか悪いとか、正しいとか間違っているとか、そういう判断はいりません。
ただ、見る。それだけです。
でも多くの人は、見ることができません。なぜなら、見た瞬間に「これはまずい」「どうにかしないと」と判断してしまうからです。判断が先に来ると、事実がねじ曲がります。「たぶん30万円くらい」が「30万円も」になり、「貯金が増えていない」が「自分はダメだ」に変わります。
観察する思考の役割は、事実を事実のまま受け取ることです。そしてその事実に、名前をつけることです。「綱渡り状態」なのか、「霧の中状態」なのか。名前がつけば、思考は次の層に進めます。
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判断する思考——線を引く
事実が見えたら、次は「判断」の層です。ここでは、「自分の場合、どこまでがOKで、どこからがNGなのか」という線を引きます。
たとえば、「食費は月5万円まで」「娯楽費は収入の10%まで」「貯金は最低でも月3万円」。これらは、判断です。でもこの判断は、正解を探すことではありません。自分の状態、自分の価値観、自分の不安に合わせて、自分で線を引くことです。
判断する思考で重要なのは、「なぜこの線なのか」を言語化することです。「なんとなく5万円」ではなく、「外食を週1回にして、自炊を増やすと5万円に収まる。そして、その生活なら続けられそうだから」という理由を持つことです。
理由があれば、線は守れます。理由がなければ、線はすぐに崩れます。そしてこの線は、固定ではありません。状態が変われば、線も動きます。だから判断する思考とは、実は「線を引き続ける」思考なのです。
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説明する思考——構造にする
線が引けたら、最後は「説明」の層です。ここでは、あなたが観察した事実と、あなたが引いた線を、「他人でも理解できる形」に翻訳します。
配偶者に「今月はこういう予算で」と伝えるとき。子どもに「おこづかいはこういう理由でこの金額」と説明するとき。あるいは3ヶ月後の自分に「あの時なぜこう判断したのか」を残すとき。すべて、説明する思考が必要です。
説明する思考では、感情や直感は最小限にします。代わりに、ロジックと手順を最大化します。「私がそう思うから」ではなく、「こういう理由で、こういう手順で、こういう結論になる」という構造を作るのです。
この構造があれば、家計管理は「あなたひとりの頭の中」から、「家族で共有できる仕組み」に変わります。そしてその瞬間、考えることは重荷ではなくなります。なぜなら、もう「あなただけが考える」必要がないからです。
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3つの層を分けて考える
思考の構造が見えれば、考えることは苦しくなくなります。なぜなら、「今、自分はどの層を考えているのか」が分かるからです。
観察しているときは、判断しない。判断しているときは、説明しない。説明しているときは、観察に戻らない。この分離こそが、思考を軽くする唯一の方法です。
逆に言えば、3つの層を混ぜると、思考は必ず重くなります。事実を見ながら判断し、判断しながら説明し、説明しながら観察する。この混乱が、「考えれば考えるほど分からなくなる」状態の正体です。
家計管理だけでなく、投資でも、経営でも、人生のあらゆる判断で、この3つの層は存在します。そしてどんなに複雑な判断も、必ずこの3つに分解できます。分解できれば、道筋が見えます。
思考の構造を実践する
では、この思考の構造を、具体的にどう使うのか。それは、あなたが今どの領域で考えようとしているかによって変わります。
もし家計や家族のお金で考えあぐねているなら、household.takebyc.jpへ。
もし投資や資産運用で思考が堂々巡りしているなら、invest.takebyc.jpへ。
もし組織の経営や資源配分で頭を抱えているなら、cfo.takebyc.jpへ。
それぞれの領域で、観察する思考、判断する思考、説明する思考を、順番に使っていくことができます。そしてどの領域でも、最初にやることは同じです。まず、観察することです。判断も説明も、その後です。
考えることは、重荷ではありません。