私は、生粋の旅人かもしれません。観光地の看板よりも、道端の小さな花に惹かれる。予約したレストランよりも、たまたま見つけた古い喫茶店で過ごす時間に満たされる。目的を決めず、無駄な寄り道を愛してしまう、それが私の旅のスタイルです。
MBTIで言えば、私はINFP、仲介者と呼ばれるタイプです。効率性や計画性よりも、感情のひだや偶然の出会いに価値を見出す、極めて感性寄りの人間です。人生の旅路においても、きっとそう。だからこそ、旅というもの自体が、私にとっては最も非効率で、愛すべき無駄の集合体なのです。
けれども私は同時に、2度のIPOを経験した元CFOでもあります。会計、内部統制、M&A、寸分の狂いも許されない世界で、合理と構造を武器に意思決定を重ねてきました。20社以上の企業の会計を担当し、上場準備から上場後のCFO業務まで、ロジックの中で生きてきた人間でもあります。
感性とロジック。効率を求めすぎると、旅は味気なくなる。感性のままに進めば、人生は混沌とする。この2つの軸のあいだで、私はいつも揺れながら歩いてきました。
あなたの中にも、心の声と頭の声がせめぎ合う瞬間はありませんか?効率を追い求めるほど、何か大切なものを失う気がしたことは?今日はそんな無駄を愛する旅人の私が、最もロジカルに決めている一つのことをお話しします。
それは、MECE、つまりモレなくダブりなくという考え方を使って、旅の無駄を排除するのではなく、守るべき無駄を構造化することです。
感性の地図を歩く旅人の視点
無駄な寄り道や、予定外の出来事。それらは一見、非効率の象徴に見えるかもしれません。でも振り返れば、そんな無駄こそが、後の自分を形づくる思考の糧になっていた、そう感じる瞬間があります。
私が会計事務所で働いていた頃、クライアントの会社を訪問する道すがら、いつもと違う道を選ぶことがありました。効率だけを考えれば、最短ルートを選ぶべきです。しかし、遠回りした道で出会った風景や、偶然立ち寄った商店街での会話が、後になってクライアントへの提案のヒントになったことが何度もありました。
INFPの旅は、感情の地図を歩く旅です。偶然の出会いや小さな発見を、意味があると信じられる力。それは非効率ではなく、創造性への投資なのです。
無駄を削ぎ落とすほどに、人は人間らしさという柔らかい部分を失っていくのかもしれません。旅における無駄とは、実は感じる余白のことです。この余白があるからこそ、私たちは新しい視点を得られる。数字だけでは測れない価値を感じ取れる。
上場準備という極めてロジカルな仕事をしている最中でさえ、私はこの感性の余白を大切にしてきました。監査法人との打ち合わせの合間に、窓の外の景色をぼんやり眺める時間。その何もしない時間が、複雑な会計処理の解決策を思いつくきっかけになることもありました。
あなたは、効率を追求するあまり、こうした余白を削りすぎていませんか?
MECEで感情を整理する技術
そんな私でも、旅の決めごとにはひとつだけルールがあります。感情を、ロジックで扱うこと。これは矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、実は感性を守るための最良の方法なのです。
たとえば、旅をMECEで整理するとこうなります。
目的軸では、癒しを求めるのか、刺激を求めるのか。時間軸では、短期の旅なのか、長期の旅なのか。同行者軸では、独りで行くのか、誰かと一緒に行くのか。そして結果軸では、再生を得るのか、発見を得るのか。
こうして分解してみると、感性で選んだはずの旅にも、無意識の意図や構造が潜んでいることに気づきます。私が温泉地に行きたくなる時は、たいてい癒しを求めている時です。一方で、知らない街を歩きたくなる時は、刺激と発見を求めている時です。
MECEは、感情を否定するための思考法ではなく、感情を正しく扱うためのツールです。ロジックで整理することで、感性を自由にする。それが、INFPのためのMECE的旅の使い方なのです。
私はCFOとして、数多くの経営判断に関わってきました。その中で学んだのは、感情を排除するのではなく、感情を構造化することの重要性です。経営者の直感や情熱は、時に数字以上の価値を持ちます。しかし、その直感を構造的に分解し、検証可能な形に落とし込むことで、より確実な意思決定ができるのです。
旅も同じです。感性のままに旅をするのは素晴らしいことです。しかし、その感性をMECEで分解してみることで、自分が本当に求めているものが見えてくる。そして次回の旅は、より自分らしい、より満足度の高いものになっていくのです。
無駄のROIという新しい指標
CFO的な視点から言えば、旅の無駄にもROIがあると考えています。ここでのROIとは、Return on Investmentではなく、Return on Impression、つまり印象の投資対効果です。
どの無駄が、心にどれだけ残るかという指標。これは金額では測れません。しかし、人生における意思決定において、この印象のROIこそが最も重要な要素かもしれません。
一見ムダな道の寄り道が、人生の新しい価値観を生む。誰かとの何気ない会話が、思考の方向を変える。目的地ではなく、過程そのものが記憶に刻まれる。これらは金額換算できない無駄の資産です。
私が2度目のIPOを経験した時、上場後の最初の決算発表を控えて極度の緊張状態にありました。その時、ふと立ち寄った近所の公園で、ベンチに座って空を眺めた10分間が、私の心を落ち着かせてくれました。効率だけを考えれば、その10分は無駄です。しかし、その10分があったからこそ、私は冷静に決算発表を行うことができました。
これが印象のROIです。投資した時間は10分。得られたものは、心の平穏と、その後の適切な判断力。金額では測れないけれど、確実に価値があった時間です。
だからこそ、旅の設計では削るよりも残すを選びたい。私の旅の計画には、必ず迷う時間と偶然に出会う時間の枠を入れています。それが、感性を守るためのロジック。ロジカルに無駄を確保するための設計図です。
具体的には、旅のスケジュールを立てる時、全体の30パーセントは予定を入れません。この30パーセントは、無駄のための時間です。道に迷ってもいい。予定外の場所に立ち寄ってもいい。何もせずぼんやりしてもいい。この余白が、旅を豊かにします。
会計の世界では、この考え方を安全余裕率と呼びます。予算を100パーセント使い切る計画ではなく、必ず余裕を持たせる。それと同じように、時間にも余裕を持たせるのです。
構造が感性を自由にする逆説
INFPの感じる力と、CFOの構造化する力。この二つは、決して対立するものではありません。むしろロジックがあるからこそ、感性が自由になれる。感性があるからこそ、ロジックに意味が宿る。
これは逆説的に聞こえるかもしれません。しかし、私の経験上、最も自由な創造性は、適切な制約の中から生まれます。
会計という極めて厳格なルールの世界で働いてきたからこそ、私はその中に小さな工夫の余地を見つける楽しみを知りました。内部統制という制約の中で、より効率的で人間らしいプロセスを設計する喜びを知りました。
旅も同じです。完全に無計画な旅は、実は不安で自由ではありません。どこに行けばいいのか分からない。何をすればいいのか分からない。その不安が、感性の自由を奪います。
一方で、大まかな構造を持った旅は、その枠の中で自由に動けます。目的地は決まっている。でも、そこに至る道は自由に選べる。この構造があるからこそ、迷うことを楽しめるのです。
私がファイナンシャルプランナーとして個人のライフプランを考える時も、同じアプローチを取ります。まず大きな構造を描きます。10年後、20年後のライフイベントと、それに必要なおおよその資金。しかし、その間の細かい道筋は、あえて余白を残します。
人生は予定通りにはいきません。予期せぬ出会いがあり、予期せぬ転機があります。その時々で、感性に従って道を選ぶ自由を残しておく。それが、構造が感性を自由にするという意味です。
旅も人生も、その両輪で動いているのだと思います。
あなたの無駄に意味を与える
ここまで読んでくださったあなたに、一つ質問があります。あなたが最近、無駄だと思いながらも、心に残っている時間は何ですか?
それは、仕事の合間のコーヒーブレイクかもしれません。通勤途中の景色かもしれません。友人との他愛もない会話かもしれません。予定していなかった寄り道かもしれません。
その無駄こそが、あなたの人生の余白です。その余白に、あなただけの物語が宿っています。
数字と向き合うのは怖いかもしれません。自分の時間を構造化するのは面倒に感じるかもしれません。しかし、その覚悟こそが、あなたの未来に耐えうるしなやかな強さを生みます。
私は上級心理カウンセラーの資格も持っています。多くの人と対話する中で気づいたのは、人は自分の感情を言語化し、構造化することで、初めて自分自身を理解できるということです。
無駄を愛するというのは、ただ漫然と時間を過ごすことではありません。その無駄に意味を見出し、大切にすることです。そのためには、自分がどんな無駄を求めているのか、なぜその無駄が心地よいのかを理解する必要があります。
MECEは、その理解を助けるツールです。あなたの無駄を、目的、時間、状況、結果という軸で分解してみてください。そうすることで、あなたが本当に大切にすべき無駄が見えてくるはずです。
論理的に考えて、あなたの人生の余白を守るための最初の1歩として、今日中に、あなたにとって大切な無駄を一つ特定してみましょう。そして、その無駄を確保するための構造を、簡単でいいので設計してみてください。
たとえば、朝のコーヒータイムが大切な無駄なら、それを確保するために30分早く起きるという構造。通勤中の景色が大切な無駄なら、一駅前で降りて歩くという構造。友人との会話が大切な無駄なら、月に一度は予定を空けておくという構造。
小さな構造が、あなたの大切な無駄を守ります。そして、その無駄が、あなたの人生を豊かにします。
あなたが今日、この記事を読んで一番心に響いた無駄は何でしたか?そして、その無駄を守るために、どんな構造を作りますか?
ぜひ、XやThreadsで、あなたの考えをシェアしてください。あなたの無駄の物語を聞かせてください。
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きっとそれは、誰にも真似できない、あなたの物語の余白になるはずです。