「言いたいことがあるのに、言葉にならない」 「違和感があるのに、説明できない」
先日noteで公開した「「言わなきゃ」と思うほど、口が重くなる理由」という記事に、多くの反響をいただきました。そこから見えてきたのは、この「言えなさ」という感覚が、多くの人の日常に静かに存在しているという事実でした。
ただ、noteでは「言わなきゃと思うほど言えなくなる」という心理的な矛盾を中心に扱ったため、「では、自分の言えなさは具体的にどこから来ているのか」「どう対処すればいいのか」という構造的な整理までは踏み込めませんでした。
この記事では、その「言えなさ」を判断OS(観測・規律・構造)のフレームワークで整理し、どのフェーズで何が起きているのかを明らかにします。感覚を構造に翻訳することで、あなた自身の「言えなさ」がどこから来ているのか、そしてどう向き合えばいいのかが見えてきます。
「言えなさ」とは何か——感覚の正体
「言えなさ」とは、心の中にある何かを言葉にできない状態です。ただし、それは単に「語彙が足りない」という問題ではありません。
言いたいことはあるのに、なぜか口に出せない。違和感があるのに、言語化できない。本音を伝えたいのに、どう表現すればいいか分からない。
こうした状態は、判断のプロセスのどこかで「詰まり」が起きているサインです。この詰まりを解消するには、まずどのフェーズで問題が起きているのかを特定する必要があります。
判断OS(観測・規律・構造)とは
判断OSは、私たちが日常的に行っている「判断」のプロセスを3つのフェーズに分解したものです。
観測フェーズ
現実を認識し、情報を取り込むフェーズ。「何が起きているのか」を捉える段階です。
規律フェーズ
観測した情報をもとに、ルールや基準を適用して判断するフェーズ。「どうすべきか」を決める段階です。
構造フェーズ
判断を実行し、結果を振り返り、次の判断に活かすフェーズ。「どう再現するか」を整える段階です。
この3つのフェーズのどこかで「言えなさ」が生じると、判断が止まり、行動に移せなくなります。
フェーズ別に見る「言えなさ」の正体
観測フェーズの「言えなさ」——何が起きているか分からない
観測フェーズで生じる「言えなさ」は、現実の認識そのものが曖昧な状態です。
職場の空気が重いけれど、何が原因なのか分からない。パートナーとの関係に違和感があるけれど、言語化できない。自分の気持ちがよく分からないまま、日々が過ぎていく。
この段階では、「言えない」のではなく、「何を言えばいいのか分からない」という状態です。情報が不足しているか、あるいは情報が多すぎて整理できていないかのどちらかです。
対処法としては、事実を箇条書きにすることから始めます。感情ではなく、起きた出来事を書き出す。「いつ」「どこで」「誰が」「何をした」を具体的に言葉にする。自分の感覚を「重い」「モヤモヤする」など、まず形容詞で表現してみる。
観測フェーズの「言えなさ」は、まず現実を言葉にする練習から始まります。
規律フェーズの「言えなさ」——言ってはいけない気がする
規律フェーズで生じる「言えなさ」は、ルールや他者の視線が言葉を封じている状態です。
本音を言ったら嫌われるかもしれない。こんなことを言ったら場の空気を壊してしまう。自分の意見は間違っているかもしれない。
この段階では、「何を言うべきか」は分かっているのに、「言ってもいいのか」という許可が出せない状態です。他者からの評価や、自分の中にある「こうあるべき」というルールが、言葉を止めています。
対処法としては、「誰に」「何を恐れているのか」を具体的に書き出すことです。最悪のシナリオを想定し、それが本当に起こるのかを検証する。「言わないことで何を守っているのか」を自問する。
規律フェーズの「言えなさ」は、自分の中のルールを見直す作業が鍵になります。
構造フェーズの「言えなさ」——言い方が分からない
構造フェーズで生じる「言えなさ」は、表現方法が見つからない状態です。
伝えたいことはあるのに、どう言えば誤解されないか分からない。感情が強すぎて、冷静に説明できない。相手に届く言葉が見つからない。
この段階では、「言うべきこと」も「言っていい」という許可も出ているのに、「どう言えばいいか」という技術が不足している状態です。
対処法としては、結論を先に言い、理由を後から補足する構造を使うことです。「私は〜と感じている」というアイメッセージで表現する。一度、箇条書きで整理してから、文章にする。
構造フェーズの「言えなさ」は、言語化の技術を身につける訓練で解消できます。
あなたの「言えなさ」はどのフェーズか
ここまで読んで、あなた自身の「言えなさ」がどのフェーズで起きているのか、見えてきたでしょうか。
観測フェーズなら、何が起きているのか自分でもよく分からない状態です。規律フェーズなら、言いたいことはあるけれど言ってはいけない気がする状態。構造フェーズなら、伝えたいことはあるけれど言い方が分からない状態。
この3つのフェーズは、独立しているようで、実は連動しています。観測が曖昧なまま規律を適用しようとすると、判断が歪みます。規律が厳しすぎると、構造を整える前に言葉を封じてしまいます。
「言えなさ」は、判断プロセスのどこかで流れが止まっているサインです。そのサインを見逃さず、どのフェーズで何が起きているのかを特定することが、判断を再び動かす第一歩になります。
「言えなさ」を構造で捉え直す
「言えなさ」は、感覚のままにしておくと、ただの「モヤモヤ」で終わります。しかし、判断OS(観測・規律・構造)のフレームワークで整理すると、それは解決可能な問題に変わります。
観測フェーズで詰まっているなら、まず事実を言葉にする。規律フェーズで詰まっているなら、自分の中のルールを見直す。構造フェーズで詰まっているなら、言語化の技術を磨く。
あなたの「言えなさ」は、どのフェーズで起きていますか。その答えが見つかれば、次に何をすればいいのかが、自然と見えてくるはずです。