なぜこの判断は迷いやすいのか
経営判断について語るとき、
多くの場合は「結果」で評価されがちです。
- 成功した → 良い判断
- 失敗した → 悪い判断
しかし、CFOの現場ではこの整理はほとんど役に立ちません。
なぜなら、判断時点では結果は見えないからです。
特に次のような場面で、判断は迷いやすくなります。
- 数字は揃っているが、結論が出せない
- 正解が複数あり、どれも間違っていないように見える
- 「あとから見れば間違いだった」と言われる可能性がある
この記事では、
結果ではなく「判断の構造」から、良い経営判断と悪い経営判断の違いを整理します。
よくある前提のズレ
判断を難しくしている最大の原因は、
多くの人が無意識に置いている前提にあります。
ズレ①
「良い判断=正しい結論が出ること」
この前提に立つと、
判断は必ず“答え探し”になります。
- 正解はどれか
- 失敗しない選択はどれか
しかし経営では、
正解が存在しない状況がほとんどです。
ズレ②
「悪い結果=悪い判断」
結果だけで判断を評価すると、
- 挑戦した判断が否定される
- 判断プロセスが共有されなくなる
- 次の判断が保守的になる
結果として、
組織全体の判断精度が下がることも少なくありません。
この判断で整理すべき3つの軸
良い/悪いを分けるポイントは、
結論そのものではなく、判断の組み立て方にあります。
軸①|状況・前提の整理
まず確認すべきは、
- 何が決まっていて
- 何が未確定で
- どこまでが自分の責任範囲か
です。
悪い判断は、
前提が曖昧なまま結論に進みます。
良い判断は、
「まだ分かっていないこと」を明示したうえで進みます。
軸②|数字・制度・実務の整理
CFO判断の中核は、やはり数字です。
ただし重要なのは、
- 数字が「揃っているか」
- 数字が「意味づけられているか」
悪い判断では、
- 売上・利益・キャッシュが混在している
- 一時的な数字と構造的な数字が区別されていない
良い判断では、
- どの数字を、何のために使うか
- 見ていない数字は何か
が整理されています。
軸③|感情・価値観・優先順位
経営判断から感情を排除することはできません。
- 急いで決めたい
- 失敗したくない
- 現場の反発を避けたい
悪い判断は、
これらの感情が判断に混ざっていることに気づいていません。
良い判断は、
- 今、何に引っ張られているか
- 本当に優先すべきものは何か
を一段上から見ています。
判断の順番
良い経営判断は、
考える順番がほぼ決まっています。
- まず確認すること
- 判断の対象は何か
- 決める必要がある範囲はどこまでか
- 次に考えること
- 使う数字と使わない数字
- 想定している前提条件
- 最後に判断すること
- 不確実性を含んだまま、どこで線を引くか
- 今回は「決めない」という判断も含めて選択肢に入っているか
※ 良い判断とは、
必ずしも「決め切ること」ではありません。
この考え方が有効な場面・注意が必要な場面
有効な場面
- 投資・採用・撤退など、不可逆性の高い判断
- 数字と感情が絡み合う経営会議
- CFOとして判断理由を説明する必要がある場面
注意が必要な場面
- 即断即決が求められるオペレーション判断
- ルールや手順が完全に決まっている業務
すべてを構造化しようとすると、
スピードを落とすリスクもあります。
自分で判断するために
良い経営判断と悪い経営判断の違いは、
結果ではなく、判断の構造にあります。
- 前提は整理されているか
- 数字は意味づけられているか
- 感情や優先順位を自覚しているか
この記事で示したのは、
「どちらが正解か」ではありません。
どの順番で、何を整理すれば判断できる状態になるか
その型だけを提示しました。
ご自身の立場・状況に当てはめながら、
今どこで判断が止まっているのかを確認してみてください。