「AI FPってすごい。もうFPに相談しなくていい?」ここまで読んで、そう思われたかもしれません。確かに、私たちが担ってきた役割の一部はAIが補えます。しかし、私たちFPが直面するお金の悩みは、家族の心の温度差や、夫婦の会話から漏れる非言語のサインが絡み合っています。AIと人間では“できること”が根本的に違う。この記事では、CFO経験FPが「AI FPにできること・できないこと」を本音で解説し、共働き夫婦がどう使い分けるべきかを考えます。
こんにちは。ファイナンシャルプランナー(FP)のtakebyc(よしはる)です。
これまでのシリーズでは、AIファイナンシャルプランナー(以下、AI FP)の特徴や、家計簿との違い、実際の使い方などをご紹介してきました。
ここまで読んで、 「AI FPって、けっこうすごい。じゃあ、もうFPに相談しなくてもいい?」 と思った方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、私たちFPがこれまで担ってきた役割の一部を、AIが補えるようになってきたのは事実です。
ですが、FPとしての実感を率直にお伝えすると、AIと人間では“できること”が根本的に違います。今回は、そんな「AI FPにできること・できないこと」をFP目線で解説しながら、どう使い分ければよいのか?を考えていきましょう。
感情や価値観と向き合うということ
お金の悩みには、感情や人間関係が密接に関わっています。これは、共働き夫婦のご相談で特に顕著です。
夫はマイホーム、妻は老後不安…心の温度差にAIは答えられない
AI FPが苦手なことの筆頭は、感情や価値観を汲み取ることです。
- 「夫はマイホームを買いたいけど、私は老後が不安」
- 「子どもの教育費と親の介護費、どう優先すれば…」
こうした複雑な背景を理解し、家族のバランスや感情にも配慮した提案は、AIには難しい領域です。どちらの意見も尊重し、どちらも責めずに、家族全員の心の温度差を測る。これが人間のFPの役割です。
感情に左右されない判断は、本当に「正解」なのか?
AI FPは、データとロジックに強く“優秀なアシスタント”です。
- ✅ 感情に左右されない判断:AIは「数字上は難しいです」と冷静に教えてくれます。
FPをしているとよくあるのが、「欲しい車を買うか、将来のために我慢するか」などの“感情が絡む判断”です。主観を排した客観的な視点は、判断の軸になりますが、それはあくまで「数字上の正解」です。
しかし、人生には「今は節約より、夫婦の時間を大事にしたい」といった、お金では測れない価値観が存在します。AIの提示した正解を、どのように夫婦の納得解にするか。ここが、FPの腕の見せ所です。
データとロジックの限界点
AI FPが得意なのは、徹底した「データとロジック」です。
- ✅ 数字の分析・傾向の把握:何十万件というデータから「平均」と「あなたの違い」を瞬時に導き出します。
- ✅ 将来シミュレーション:収入・支出・貯蓄をもとに、老後にいくら不足するかなどを予測してくれます。
これらの“未来の見える化”は、多くの方の行動のきっかけになります。しかし、そのデータが法制度の壁にぶつかると、AIは立ち止まってしまいます。
制度の複雑さへの対応(保険・税制・相続など)の壁
AIは基本的な提案はできますが、制度の複雑さへの対応、特に法制度を前提とした相談は苦手です。
- 保険の細かな条件比較や、給付金の適用判断
- 相続税・贈与税などの個別対応や特例の適用
- 住宅ローンの組み換えなど、専門知識が必要な手続き
これらの複雑な手続きは、常に更新される法制度を前提としており、経験値に基づいた柔軟な判断が求められます。やはり人間のFPの出番です。
家計の「事実」だけでは描けない、人生の「納得解」
人それぞれ、人生のステージや優先順位は異なります。共働き夫婦であれば、キャリアや育児の状況によって、数年単位で最適なプランは変わります。
- 「今は貯蓄より、妻のキャリアアップのための自己投資を優先したい」
- 「あと数年は子どもとの時間優先で、仕事のペースを落としたい」
こうした状況に応じた柔軟な判断・提案は、AIには難しい領域です。FPは、ただデータを整理するだけでなく、ご夫婦の非言語の希望や、口には出さない本音まで汲み取り、“正解”ではなく“納得解”を導く伴走者である必要があります。
AIと人、それぞれの強みを活かした整え方
私自身がFPとして感じている理想のスタイルは、次のような“使い分け”です。AIは優秀なアシスタントとして最大限活用し、人間はより深い問題解決に集中する。
【AI FPに任せること】家計の見える化と数字の整理
AI FPは、以下の分野で最大の効力を発揮します。
- 家計の見える化
- 将来の資金シミュレーション
- 毎月の支出チェックと改善のヒント
- ▶ 「全体の把握」「数字の整理」はAIに任せる
膨大なデータを処理する作業はAIに委ね、ご夫婦のエネルギーを「どう活かすか」の議論に集中させましょう。
【人間のFPに相談すべきこと】選択の優先順位付けと伴走
人間のFPは、AIでは踏み込めない「人生の質」に関わる問題を担当します。
- 人生設計に関わる重要な選択(住宅・教育・老後など)
- 感情や家族事情の調整を含む問題
- 税務・保険・相続などの専門的な手続き
- ▶ 「選択の優先順位付け」「価値観に寄り添う相談」はFPに
「AIで見えた情報をどう活かすか?」を、あなたの価値観を尊重しながら一緒に考える信頼できる伴走者として、私たちは存在しています。
光と余白の締めくくり
AIは、これまで難しかった家計や資産の見える化を、驚くほど簡単にしてくれました。まるで暗い部屋に光を灯し、これまで見えなかった隅々まで照らしてくれたようです。
でも、そのデータをどう活かすか?どう選択するか?を決めるのは、あなたとご家族の価値観です。
数字が整理された後の「余白」を、ご夫婦の心の温度差を埋めるための対話に使いませんか。AIは便利なツールですが、あなたの人生の安心を築く「信頼できる伴走者」は、やはりあなた自身と、あなたの声に耳を傾ける人間にしか務まりません。あなたの人生に、心地よい安心の余白が生まれますように。
あなたにとっての信頼できる伴走者とは
AIは、これまで難しかった家計や資産の見える化を、驚くほど簡単にしてくれました。まるで暗い部屋に光を灯し、これまで見えなかった隅々まで照らしてくれたようです。
でも、そのデータをどう活かすか?どう選択するか?を決めるのは、あなたとご家族の価値観です。
数字が整理された後の「余白」を、ご夫婦の心の温度差を埋めるための対話に使いませんか。AIは便利なツールですが、あなたの人生の安心を築く「信頼できる伴走者」は、やはりあなた自身と、あなたの声に耳を傾ける人間にしか務まりません。あなたの人生に、心地よい安心の余白が生まれますように。