CFOのための法務基礎──「会社法」と「金融商品取引法」どこまで押さえるべきか

経営と数字のリアル

対象読者: IPO準備企業のCFO、管理部門責任者、上場企業の経営幹部候補者


はじめに:法務知識は“リスク回避”だけではない

CFOに求められる法務知識は、単に法的リスクを回避するためだけのものではありません。重要なのは、経営判断の正当性を「説明できる」状態をつくること。その土台となるのが「会社法」と「金融商品取引法」です。


会社法──社内意思決定と責任のルールを理解する

CFOが押さえるべき理由

  • 議事録の整備、会議体の招集手続き、決議・報告の判断に直接関与
  • 株主総会・取締役会運営、資本政策の立案などの重要意思決定の実行責任者である

実務上の重要トピック

  1. 取締役会と株主総会の関係性
    特に定款と取締役会設置会社としての役割整理は必須
  2. 取締役の責任と注意義務
    善管注意義務/忠実義務に関するガイドライン理解
  3. 会議体の招集と議事録整備
    定款・規程に基づいた招集通知のタイミング、出欠確認のルール
  4. 決議事項 vs 報告事項の整理
    決議が必要かどうかは、「取締役会規程」および「職務権限規程(一覧含む)」で明確化されている必要がある
  5. 職務権限規程の定期的見直し
    特にIPO準備企業においては、上場審査過程・監査法人レビューで確認対象となる
  6. 自己株式の取得・SO発行など資本政策判断
    社外専門家との連携が前提だが、CFOとしての理解は不可欠

金融商品取引法──開示と信頼を担うCFOの中核任務

CFOが押さえるべき理由

  • 有価証券報告書やIR活動、適時開示における「開示責任者」である
  • 上場企業としての説明責任、投資家との信頼関係を築く立場にある

実務上の重要トピック

  1. 適時開示の定義と判断基準
    「決定事実・発生事実・決算情報」の分類理解が必要
  2. 東証との対話、実務対応
    適時開示における東京証券取引所の担当者との事前相談や問い合わせ応対
  3. 取締役会メンバーとの情報連携
    経営陣への早期共有と開示方針の合意形成プロセスを設計する力
  4. 虚偽記載・訂正開示のリスク管理
    「正確な開示」だけでなく「誤解のない表現」まで含めて留意が必要
  5. J-SOX・内部統制報告制度の概要理解
    形式的な提出ではなく、実質的な説明能力が問われる場面が増えている

四半期・期末監査──監査法人との“共通言語”としての法務知識

  • 財務報告上の不備だけでなく、開示・会議体運営・統制の整備状況が問われる
  • 監査法人と対等に議論するには、「会社法・金商法の論点」を把握しておく必要あり
  • 書類整備だけでなく、背景の説明力もCFOの役割

おわりに:法務知識とは“意思決定の筋道”を持つこと

会社法も金融商品取引法も、暗記する知識ではありません。 「この意思決定はどのルールの上に立っているのか」 「説明責任を果たすには、どんな段取りが必要か」

その視点を持ち続けることが、経営の信頼を守るCFOの“法務リテラシー”です。


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