「CEOとCFOって、何が違うの?」
経営に携わっていても、この問いに明快に答えるのは意外と難しいものです。
「CEOはトップで、CFOはお金の責任者」──そんなイメージが先行しがちですが、実際には組織の成長にとって両者の“視座”と“役割の違い”を理解しておくことが非常に重要です。
本記事では、上場企業でCFOを務めていた筆者の実体験を交えながら、「CEOとCFOの本質的な違い」について解説します。
CEOは“未来を描く人”、CFOは“数字で翻訳する人”
まず最も大きな違いは、**「何に責任を持っているか」**という点です。
- CEO(Chief Executive Officer):会社全体のビジョン、戦略、人材、組織づくりなど、“未来の設計”に責任を持つ
- CFO(Chief Financial Officer):財務・会計・資本政策・予算管理・内部統制など、“経営の実行性と信頼性”に責任を持つ
CEOが「理想の未来」を構想する人だとすれば、CFOはそれを実現するために必要な数字を描き出す人です。
いわば、CEOが“絵を描く画家”で、CFOは“設計図を引く建築士”のような関係性です。
CEOとCFOでは、発する「問い」が異なる
この違いは、社内での言動にも現れます。
たとえば、ある新規事業について議論する場面で──
- CEOの問い:「この事業が社会に与えるインパクトは?どんな未来をつくりたいのか?」
- CFOの問い:「それは年間いくらの投資で、何年後に黒字化できる?資金調達はどうする?」
どちらの問いも正しいのですが、見ている世界が違うのです。
CEOは“可能性の世界”を見ており、CFOは“現実の数字”を見ている。
だからこそ、議論が噛み合わなくなることもあるし、お互いの視座を理解し合うことが不可欠になります。
CFOは“NO”という人ではない
CFOの役割は「リスクを止める人」ではありません。
むしろ、「どうすればYESにできるか」を数字で考える人です。
実務では、CEOから「このプロジェクトをやりたい」と言われる場面がよくあります。
そのときCFOが行うのは、単なる「賛否」ではなく、
- キャッシュフローの見積もり
- 事業採算のシミュレーション
- 投資対効果の再検討
- 実行タイミングの最適化
など、“現実的に実行可能な形”に整えるための支援です。
CEOの「やりたい」を、CFOが「やれる形」に翻訳する──これが本来のCFOの価値なのです。
CEOとCFOは「正反対の役割」ではなく、「補完関係」
CEOとCFOは、あえて言うなら「左脳と右脳」。
片方だけでは前に進めず、両者が対話しながら経営を推進していくパートナー関係です。
- CEOが語る未来に、CFOが数字で説得力を持たせる
- CFOが示す現実に、CEOが夢を吹き込む
この“行ったり来たり”の往復運動があるからこそ、企業はブレずに進化できます。
まとめ|「違い」を知れば、経営はもっと強くなる
CEOとCFOは、役職の肩書き以上に「視座」「問い」「責任範囲」が異なります。
その違いを理解し、相互補完の関係を築くことが、企業の持続的な成長に直結します。
経営の中枢を担う立場であればあるほど、
「誰がどこを見ているか?」
「どんな問いを発しているか?」
この視点を持ち続けることが、チームを強くし、未来を切り拓く力になります。